ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか

現代は、江戸から明治に匹敵する「時代の大きな変わり目」だ。ウェブという「学習の高速道路」によって、どんな職業の可能性がひらかれたのか。食べていけるだけのお金を稼ぎつつ、「好き」を貫いて知的に生きることは可能なのか。この混沌として面白い時代に、少しでも「見晴らしのいい場所」に立ち、より多くの自由を手にするために――。オプティミズムに貫かれ、リアリズムに裏打ちされた、待望の仕事論・人生論。『ウェブ進化論』完結篇。

示唆にとんだ本。これからの半生を考えさせられる20歳以上年上の方が書いた本
・無限の情報と有限の個をつなぐ世界の結び目を自動生成するグーグルのような会社がインターネットの中心に位置して大きな価値を生み出すようになった。
・オプティミズムの姿勢で物事に退治しなければ創造は生まれない
・表現の機会すら持たなかった無数の人々の知が集積されの相対が専門家の知を凌駕する。「群集の叡智」(wisdom of crowds)
・研究者や大学教授は、blogを書き、自分の論文や著作の背景にある発想や思考過程をネット上で公開し、リアルな授業を録画・録音して不特定多数に向けて発信しない
・未来は能動的に変えることができるものだが、そのエネルギーはオプティミズムが支える。それは群集の叡智についてビジョンを示しつつ実名で部ログを書きFBを受ける
・専門性や実務能力(人生をsurviveする)を身に着けていく学習プロセスとその意味をめぐって大きな変化がおきている=高速道路理論
・誰でも「その道のプロ」一歩手前までは信じられないスピードでなれる、問題はその先が大渋滞になっていること。
・混沌として面白い時代を生きていく上でのチャンスは、1大変化を恐れるのではなく楽しむ2ネットを「個」の可能性を押し広げ「個」を開放する環境として捕らえる3個としての精神的自立が大事4未来派創造するもの。ネットとリアルの境界領域には新しい職業が生まれる可能性に満ちている。
・パブリックでオープンでフリーなインターネットの発展は、非営利な活動によって推し進められてきた面が大きい。
・検索エンジンがもうひとつの地球における世界の結び目の役割を果たす存在となったことが最も重要なポイント。だからこそ全世界で5億人以上の人々が利用する
・検索エンジンをはじめ各種サービスをオープンにフリーに提供さえすれば人数がいるだけに恐ろしく儲かるという仕組みを作り上げた。パブリックでオープンでフリーなインターネットの特質を維持しつつ富を生み出すエンジンを持った。
・ネットの本質は2つ、パブリックな場所とパスワードなどで守られたプライベートな場所、グーグルの主戦場は前者。後者をMyspaceなどが戦っている。
・こちら側とあちら側、コンピューターサイエンスを使い、あちら側にすべてのアプリケーション、生命維持ができる状況を作り出す。
・もうひとつの地球=広告収入×チープ革命×群集の叡智×組織の情報発信
・世界全体の広告市場規模約50兆円(日本は6兆円)加えて検索連動広告など単価の安いものが需要を掘り起こしている。世界全体の潜在市場規模はざっと60-80兆円2015年は世界のネット広告市場規模はざっと10兆円
・グーグルはコミュニティを主宰することを嫌う。パブリック全体に投網をかけるように情報収集し、その成果を検索エンジンの利便性という形で提供する。
・クレイグリスト:事業場の利益を追求しすぎると、コミュニティの信頼を失う
・経済活動の外側で活動する能力がパワーアップされる。能動的で創造的な行為における「好き」を貫く自由が広がる
・一人の人間が持つ多様な能力・関心・知識をいろいろな場面で開花させる可能性がネットによって開かれた。気持ちだけ参加もあり。
・ただの高速道路ができたのに、何でみんな歩いているんだよ!
・インターネットを通じて、働き方や生き方を変えることができるということを本当に信じている人が日本にはどれだけいるのか
・大組織で成功できる要素(p93)簡単に言うと、誰かから与えられた所与の条件が多い中で、楽しみ、がんばり、組織を優先できるか。我慢できるか。
・高く険しい道を行くには、病的な心配性、アントレプレナーシップ、バンテージポイントが必要
・病的な心配性:only the paranoid surviveそれくらいの緊張感でやったものだけが勝てる(元インテルCEOアンディグローブ)
・アントレプレナーシップ:自分の頭で考え続け、どんなことがあっても絶対にあきらめない。勝ったものは勝つまでやったもの
・ヴァンテージポイント:見晴らしのいいところ。最先端に身を置く
・けものみち、少なくとも生き抜いていくために:あらゆる場面で徹底的にネットを活用。自分の嗜好性や専門性や人間関係をよりどころに、価値を定義して常に発信していくこと。価値に対価を払ってくれる人がいる状態を維持し続けること。個を輝かせようとし、組織と適切な距離をとること
・高く険しい道は専門志向の自由な生き方、けものみちは総合思考の自由な生き方。まだけものみちの歩き方は日本では言語化されていない
・in the right place at the right place
・ロールモデル思考法:自分が好きなものを発見する形として、直感的に「好き」→何がすきなのか→なぜすきなのかを繰り返し、断片を集める。自分の波長の合う信号を高いで集められるかどうか、が重要。
・ロールモデルを選び続ける、全人格を受けるのではなく、ある人のある部分、時間の使い方、など人生のあらゆる局面に関するたくさんの情報から、ロールモデルを収集する
・ロールモデルの仕込みを丁寧にやり続け、天気になるとその引き出しを開けてロールモデル思考によって大きな判断をくだし、没頭し、また繰り返し
・今を生きるための水を飲むようにロールモデルを探す読書は、たくさんの本の中の膨大な情報をブラウジングして、その時点で自分が渇望している信号を探すために行う
・ジョン・ドーアが若き日にやっていたことは、スタンフォードの研究室に入り浸り、才能を持ったとがった連中と長い時間を過ごし、本人が気づかない可能性を引き出した。
・ロールモデル思考法:自分の志向性をより細かく定義していくプロセス。人の生き方や時間の流れ方に興味を持ち、それを自分の問題として捉える無限の情報の中から波長の合うものを高速でサーチし続け、自分という有限に落とす。さらにそこから出た架設に従い、時間の優先順位を変えて、没頭する。行動によってまた新たなステージに到達
・好きな対象さえはっきりすれば、ネットはそれを増幅する。ロールモデルは消費財
・一番重要な判断を、直感に基づくロールモデル思考法で行い、その後のサバイバルには緻密な戦略を立ててこつこつと執行する
・好きを見つけてそれを育てるための思考法は何かないのだろうか。突き詰めればそれは戦略性と勤勉ということに行き着く。
・好きを見つけるための努力をこつこつと続け、好きなことの組み合わせを見つけたら面倒なことでも永延と続ける勤勉さと持続力が鍵を握る
・信号をキャッチできたら、時間の使い方の優先順位を変えて、勝負する。
・やめることを先に決める。
・長期なりたい自分と短期、なれる自分を意識して現実的であること。好きを貫くことは長期戦。短期的になれる自分を積み重ねることが大事
・知的生産の成果に焦点を当て、表現をし、コミュニケートする。(P147が詳しい)
・けものみちはそれぞれの好き・強みを組み合わせて生きる領域「お前は何をやっているのか」と問われたときに相手に伝わらなくてはいけない。
・志向性の共同体を作るために、文型のためのツールがほしい。(p164)
・みながこの人から学びたい、と思う知人を一人選びその人がBlogを開設するというループがうまく回れば、それだけでも日本語のネット空間は成長する
・Blogでの意見表明が将来の飯の種になる時代が来た
・英語圏のネット空間の知は、次の10年で圧倒的に充実する。このまま10年が経過すると、英語圏の学習の高速道路が圧倒的に充実する。
・共有することが前提、やりたいと思う仕事に自発的に取り組み、オープンな環境で「思いっきり」力を発揮する。グーグルの競争優位の源泉。社員が仕事に没頭できる環境
・ある時点で、大組織内に生きると決めるのであれば覚悟が必要。大組織のプロとしてかつ、炭鉱のカナリアとなる指標は昔からの「ゆったり会社」(P190、195)
・日本社会も大きく変わった、と過半数の人が感じるのは、2015~2020の間。
・時代の変わり目を生きるために一番重要なのは、古い価値観に過剰適応しないこと。
・新しい世界は入ってくる人に優しい、そっちのほうが面白かったから、が重要。
・ウェブ・リテラシー:ネットの世界がどういう仕組みで動いているのかの原理は相当詳しく、徹底的に理解している。ウェブで何かを表現したいと思ったらすぐにそれができるまで才と構築能力を身に着けている。ウェブ上の分身に金を稼がせてみよう。見たいな話を聞けば、そこに自分なりの技術を入れてサイトを作って実験できる。
・ウェブ上にあふれる新しい技術についての解説を読んで独学できるレベルまで、ITやウェブに対するりかいとプログラミング能力を持つ。(P209)
・WEB2.0も志向性の共同体も、サービス提供者やリーダーの周囲に多くの参加者が集まって初めて成立するもの。中核には信頼がないと成り立たない。スケール、技術、利便性などにおいて圧倒的な物を提供できれば信頼を維持したまま巨大事業を目指せる?
・ベンチャー創業者はリスクマネーを調達する、それを得てビジネスをする以上、7年以内にEXITが前提になる。
・あなたの国の疲れたもの、貧しきものを私の元に遣すがいい
・もうひとつの地球は基礎的な力を吸い取り紙になって吸収した先に大きく広がる自由な世界である。その後は没頭する対象を自ら選択し、人々に平等に与えられる唯一の資源たる時間の一瞬一瞬を自分の席に出そこにつぎ込んでいく。それがもうひとつの地球と積極的に付き合う新しい生き方だ。