プロフェッショナル職で海外赴任に向く人、向かない人。

今回の話は、良く有る駐在員型(ホワイトカラー)ではなく、プロフェッショナルな方々(アスノバがやっているようなスタイリストだったり、日本料理だったり弁護士だったりと直接その人たちが「価値を作り出す」人たち)のお話です。

1年弱、直接お客様からお金を頂くビジネスをして(その前に2年ほど、B2Bでは頂いていたのですが)特にプロフェッショナル職は割と顕著に、「活躍しやすい心持ち」の人がいるので、今後採用をする、もしくは現地に誰かを送ろう、と思っている企業の方々の参考になれば。まあ、常識なのかもしれませんが、勝手知ったる土地と、知らない土地で成功する気質は、違うなぁ、と思う事が多いのでポイントだけまとめておきます。

1.自分が通用しない事に「なるべく早く」気づく。

多くの国で、就労ビザは「単純労働」には出ません。(日本の場合、どんなに素敵な技術を持っていても、外国人美容師にも出ません。)

自ずと経験が有る、ある程度実績の有る人がプロフェッショナル職としては海を渡るのですが、実はこの「経験値」がくせ者です。端的に言うと、まあ、ほとんどの場合において、初めの半年-一年、日本で培って来たセンスは通用しません。この辺りの話はレーダーがぶっ壊れている感覚の話と似ているんだと思いますが、 問題は、プロフェッショナル職はその「センス・感覚」がゼネラリストよりも価値の源泉である、と言う事。

そうはいってもゼネラリストは仕組みだけで食べれるパターンも有りますし、そもそも商品力で売れるパターンもある。でも、プロフェッショナル職は彼ら自身が商品なので、マーケットから見ると渡航当時は「イマイチピントの合ってない商品」に成り下がってしまうのです。

ここで、大きく「そうはいっても、自分はイケテル。」と思うか、「あ、追い回しからもう一度やり直しだ」と開き直れるか。ここが分かれ道。(もちろん、まれにそんな事を超越したセンスで1日目からばんばん売れる人も居るとは思いますが、あくまで傾向値)どんなマーケットにも特徴、特性はあって、それは今迄自分が生きて来たマーケットとは全然違うんだ、ここでは自分はルーキーなんだ、と思えるかどうか、それをいかに早くキャッチアップできるかどうか、何よりもお客様に「教えていただく」姿勢が持てるか、がどうもパフォーマンスを分けているようです。

ここを超えると、(例えばうちのサロンでは)不思議とお客様から支持をされ始めますし、何より本人に自信が戻ってきます。「一皮むけたなぁ」が見た目に分かると一緒に仕事をしていて楽しいです。

2.日本を(良い意味で)捨てられる。

本人が希望している場合、「海外で働きたくて」日本を出ているのですが、意外と(上記の理由で現地で通じない、と言う事も含め)日本を捨てられません。それはコミュニティしかり、生活様式しかり。その結果、言語の習得だったり、シンプルに「現地の友達」だったりができなかったりします。自分で選んで来ているはずなので、「日本の友人たちは捨ててきました」と言える、その土地にコミットできるかどうか、が上記の通用しない状況から一皮むけるかどうかの大事なポイントだったりします。

今はLINEなどもあり、日本とつながりやすい環境がこの面ではマイナスに働いたりします。1番も2番も、現地で活躍するって心に決める。って言うところだけなのですがこのマインドセットを持てるかどうか、技術がイマイチでも(技術面では幸いな事に日本とアジア諸国ではひいき目無しに大きく差がある事が多いから)心持ち優先で採用した方が、明らかにいい結果になると思います。(かくいう僕は言語はまだまだイマイチすぎます。。。会社のパフォーマンス優先というのにかまけて、キャッチアップできてない事に反省中。。。)

3.AAA株式会社の誰誰です、ではなく「あ、あの人昔AAAに居たんだ」と言わせる覚悟 

最後に、海外で働いている日本人として、多分どの人も見ていると思うのですが、日本とは違い、海外では「撤退」と言う言葉が常に有りますし、びっくりするほどあっさりと、会社が無くなります。

ちょっと前も、日本では大手の美容チェーンが上海から撤退をしました。また、美容に限らず多くの有名チェーンが乗っ取られたり、撤退したりしています。そして多くの場合、現在の日本の経済状況を考えると、撤退をした後に、プロフェッショナル職に日本での職が保証されているとは(プロフェッショナル職に限らずですが)限りません。

日本以上に「会社に何かをしてもらう」 姿勢よりも「いやいや、こいつすぐに独立しそうじゃね???」という位の気概をもって「大概の事は自分で決めます」と言い切れる、そんな強い独立心のある人が、結果として(短期間かもしれませんが)会社を大きく、収益モデルを創れる人になる気がします。

個人的に、日本に居る時以上に「どうやって企業を存続させるか。このメンバーが居なくなったらどうやってバックアッププランを実行するか」を別に誰に言われなくとも、考えるという癖がついたのは、難しい市場で生き残る為の 自然の知恵と勘だと思うとともに、マーケットが厳しい(けれども穴も多い)からこそ、戦い方、組織の創り方が有るんだな、とまとめてみて改めて感じる今日この頃。(日本だけでビジネスを感じていたら「短期で独立するであろう事が見えているリソースを採る・採らないは結構大きなイシューだと思いますし、上記の特徴を持つ人はマネージメントサイドから見ると、大きなデメリットももってます。想像できると思いますが、一言でいうと「使いにくい」です。強いですが、その強さは猛獣のような人ですので。)アジア進出、アジアでの拡大を考えている方々の、何かの参考になれば。